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その昔、天日槍の一族が住んでいたという伝説をもつ菅浜は、今も古い習俗や伝統ある行事を伝えています。中でも精霊船送りは県無形民俗文化財にも指定されており、美しく飾られた精霊船は見事です。  
  8月15日夕方6時ごろ、渚に置かれている精霊船は、多くの村人に見送られ曳き船で沖へ沖へと曳き出されます。船は竹・カヤ・麦ワラなどを束ねて造った、長さ8メートル、幅4メートルほどあり、施餓鬼幡(せがきばた)や色紙の切紙細工を飾りつけて、曳き出す少し前に盆のあいだ仏壇に供えてあった菓子や果物、それに水の子といわれる瓜や茄子などを、各家庭から持ちより船に積み込みます。  
 そしてウリオイといって、去年の盆までの一年間に亡くなった人のある家の男の人が、その船に乗り込んで精霊を送っていくわけですが、大分曳き出されたころ、新聞紙などを貼り合わせて作った、「精来丸」と大きく書いた帆をマストにあげ、かなり沖合に出た頃曳綱をといて、ウリオイの人たちは曳舟に移り、別れを惜みながら戻ってきます。ちょうど、その頃、水平線上に真っ赤な太陽が波や雲を染め、夕陽に照らされた精来丸の姿は神々しく、常世の国へ還っていくような思いがします。その頃、浜辺では老人たちの唱える浜念仏に波音が静かに和して、精霊を送ったあとのけだるく、もの悲しい夕(ゆうべ)が迫って来るのです。  
 この精霊船は男女青年たちが、総がかりで精根を傾け、男性は材料の調達から船の仕上げまで、女性は飾りつけの切紙細工に打ち込みます。残暑に汗をしぼりながら、伝統を守り続ける意欲と気迫に充ちた態度には、おのずから頭が下がります。  
  昔は北浜、南浜でそれぞれ一隻ずつ精霊船を造り、若い衆が伝馬船に乗り込んで、それを曳き、櫓を漕いでその速さを競い、勝ち負けによって、漁や農作の豊凶を占ったそうです。
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